2016年11月22日火曜日

米国西海岸打ち合わせ(その2)

出張後半は,メンロパークの南隣のパロアルトです.

この街にある,スタンフォード大学を初めて訪問し,最先端の地震学研究に触れながら,研究打ち合わせを行いました.


上の写真右側に見える塔はスタンフォード大学のシンボル「フーバータワー(Hoover Tower)」です.

下の写真は,今回訪問した,地震学や地球物理学の研究者たちの研究室が入っている建物です.


スタンフォード大学構内は,1891年に創立時からの石造りの建物が多く,「西海岸はサンアンドレアス断層もあるのに,このあたりは地震活動が低いの???」とついつい気になってしまうのですが,1906年サンフランシスコ地震(マグニチュード7.8)の時には大学構内の建物の一部が倒壊したりしたそうです.下の写真の有名な「メモリアル・チャーチ」もその時の地震で被害があったようです.


これで今回の米国西海岸出張は終わり,帰国の途につきます.帰国後は,荷物の準備をして沖縄県先島諸島(南琉球)への野外調査...石垣島や波照間島を予定しています.

2016年11月19日土曜日

米国西海岸打ち合わせ(その1)

今週は研究打ち合わせでアメリカ西海岸に来ています.

サンフランシスコ国際空港に到着し,鉄道を乗り継いで,アメリカ地質調査所(USGS)があるメンロパークへ移動しました.空港からはBART(写真上)と呼ばれるサンフランシスコ/ベイエリアの各地をつなぐ公営高速鉄道システムに乗り,途中で,カルトレイン (Caltrain,写真下)と呼ばれるサンフランシスコとシリコンバレーを繋ぐ鉄道に乗り換えました.



下の写真はUSGS最寄り駅のメンロパーク駅の駅舎です.


USGS(写真下)での打ち合わせ2日間では,午前午後それぞれ30分間隔で15人ほどの研究者と個別に議論する慌ただしいスケジュールでした.30分が一瞬に感じるほど議論が盛り上がり,これまでやってきた研究スタイルがUSGSでもウケて安心しました.皆さん大変好意的に話を聞いてくれました.


今回の収穫の1つとして,外国人研究者と研究打ち合わせの時に短時間で自己紹介する場合は,自分の研究を紹介するホームページのコピー(写真下)で十分だったことです.日頃から英語でホームページを作成し,研究トピックスと業績リストなどを整理しておくと便利です.


外国人研究者との議論で感じたことは,英会話の能力よりも,研究の要点を抑える視点が大事なこと.たどたどしい英会話でも,相手が面白いと思うサイエンスをこちらがやっていることが伝われば議論は十分に盛り上がる印象です.普段から自分の研究結果を他人が見て分かりやすい図や表を作っておきたいですね.その意識は論文執筆にスムーズに繋がっていくと感じています.

2016年11月18日金曜日

コツコツ論文執筆

なんとか1日1時間は論文執筆にあてるように意識するようにしています.論文執筆のリズムに慣れてくると,執筆作業しない日は気持ちが落ち着かないようになっていきます.毎日のジョギングと同じですね.

筆頭,共著含めて,論文数がやっと年齢の数まで10をきってきました.自分の年齢の数まで論文書くことを研究者として一つの通過点と考えています.後々に残る論文を書きたいところです.

研究業績リスト(2016/11/09更新)
https://staff.aist.go.jp/otsubo-m/contents_pubj.html

昨今の成果主義には色々と思うことありますが,,,それでも,論文書くまでが研究だと思うし,論文書くことで自分が研究をやってきた足跡を残せると思っています.学会や研究集会での成果発表は,「足跡を残すこと」ではなく,「アピールのための広報」という位置づけだと思うようになってきました.

研究の足跡をコンスタントに残せているかどうかは,海外研究者との議論の際の説得力に違いがでます.まずは,「自分の研究とは何か?」をスパッと言い切れるための主要論文5つを揃えたいところ.周囲にスパッと言い切れる論文が無くて,「私はこういうこと考えてますよ」というのは海外研究者にはほとんど通じない印象です(すぐに海外研究者にアイデアだけ持っていかれます...).

他の人がツイッターでつぶやいていたことですが,自分の主要論文5つ揃えることは,「ドラクエ」でいうところの,「剣,鎧,盾,兜は常にいいものに揃えて,あとは必要に応じて道具を持ち物いっぱいにして置く」に近い感覚です.持ち物全てをいいものにすることまではない印象です.

論文執筆の際の参考に,以下の二つのホームページを紹介します.

1.研究者のための論文10カ条
http://members3.jcom.home.ne.jp/mag-hu/Tsunogai/Ronbun/Zatsu5/Zatsu5-60d.htm
2.これから論文書く若者のために http://www7b.biglobe.ne.jp/~satoki/ronbun/kyo/korekara/korekara.html

2016年10月14日金曜日

2016年地惑若手会

来月開催される「2016年度 地球惑星科学 学生と若手の会」のお知らせです.

日時:2016年11月12日(土)・13日(日)
場所:東京大学本郷キャンパス 理学部1号館
定員:100名 (予定)
対象:学部生・大学院生・若手研究者・地球惑星科学に興味を持つ方であればどなたでも!
申込締切:2016年10月28日 (金)

詳しくは,webページをご覧ください.
https://sites.google.com/site/nyswakate/2016

最先端の地球惑星科学研究にまつわる様々な分野の講師の講演とグループディスカッションが企画されています.

【プログラム】

11月12日 (土) 10:00–18:30
10:00–10:20 開会式・アイスブレーク
10:30–11:30 講演1: 清家 弘治 先生(東京大学)
                        現在および過去の海洋生態系を対象とした底生生物の研究(仮)
12:50–13:50 講演2: 坂口 綾 先生(筑波大学)
                        見えないものをみる、見えないものからみる~核の汚染と利用~
14:00–15:30 グループワーク1
15:50–16:50 講演3: 内出 崇彦 先生 (産業技術総合研究所 )
                        震源を地震波で読み解く・聴き取る
17:00–18:30 グループワーク2
18:40– 懇親会

11月13日 (日) 9:00–17:30
  9:00–10:00 講演4: 菅沼 悠介 先生(国立極地研究所)
                        地球温暖化で南極の氷は融けるのか?
                        :極限フィールドワークから探る南極氷床の将来安定性
10:10–11:40 グループワーク3
12:30–13:00   掘削船JOIDES Resolution号との船上から中継 (予定)
13:10–14:10 講演5: 上野 雄一郎 先生(東京工業大学)
                        初期地球大気の研究
14:40–15:40 講演6: 堀 安範 先生(国立天文台/アストロバイオロジーセンター)
                        太陽系外惑星から挑む宇宙生物学
15:50–17:20 グループワーク4
17:20–17:30 閉会式

これまで下の写真のような雰囲気で開催されました.



2016年10月12日水曜日

佐渡島調査

9月下旬は地質調査で佐渡島に渡りました,約10年ぶりの佐渡島です.

佐渡島は「佐渡ジオパーク」として日本ジオパークとなっています(2013年選定).

佐渡ジオパーク
http://www.sado-geopark.com/

佐渡市・佐渡ジオパーク推進協議会:佐渡の大地の見どころ(https://www.city.sado.niigata.jp/sadobunka/geopark/resume/2_daithi/2s.pdf)から引用.

佐渡島は東北日本の代表的な地殻変動(大陸時代,日本海拡大前後,第四紀からの短縮変形)が一通り観察できます.調査中の写真をいくつか紹介します.

佐渡島にはフェリー(佐渡汽船,http://www.sadokisen.co.jp/)で渡ります.


カーフェリーのデッキのパネルには佐渡までの航路は国道と表示.国道350号は一般国道として海上部分も道路扱いなのがビックリです.


さて,佐渡島に上陸して,島の北側(外海府海岸)から調査を始めました.

写真1:大野亀での粗粒玄武岩からなる岬.

写真2:北鵜海岸での3億年前のフズリナを含む石灰岩ブロック.おおむね大理石に変化しています.大理石は石灰岩がプレートの沈み込みによって,地下深くまで運ばれて,高温高圧を被ったものです.一部サンゴの痕跡が見ることができます.

写真3:中山峠での日本海の誕生に始まり1000万年間にわたって深海に堆積した珪藻土.

写真4:大須鼻の活断層.写真右側が乗り上がる逆断層で,礫層が断層運動によって引きずられています.崖に活断層の側面が観察できるのは日本では珍しいです.

写真5:河ヶ瀬崎の玄武岩と礫岩の不整合(写真中央).この不整合は日本海(写真左方向)の底につながる境界と考えられて,1983年の研究船による日本海海底掘削でも同様の地層のコア試料が得られました.

写真6:元小木の枕状溶岩.マグマが水中に流れ込んだり,水中で流れ出したりすると枕状溶岩に.ここの枕状溶岩は日本で最初に枕状溶岩として報告されました.マグマの急冷構造であるチルドマージンがハッキリと観察できます.

日本海拡大を含む1億年前から現在までの日本列島付近の地形の変遷は下の図を見てください(おおだwebミュージアムの説明文を一部引用).恐竜が栄えていた1億年前には日本列島はまだなく,ユーラシア大陸が太平洋に直に面しています.日本海の形成開始は中新世の始め頃(約2200万年前)です.大陸の縁辺部(大陸の海岸付近)では火山活動が活発になって大地が割れ始めました.割れた大地には海水が徐々に入っていき,日本海が産声を上げることになります.そして,約1000万年の時間をかけて日本海が拡大し,東日本と西日本が「ハ」の字に開くようにして日本列島が現在の位置に移動していきました.

1億年前から現在までの日本列島付近の地形の変遷図.おおだwebミュージアム(http://sanbesan.web.fc2.com/index.html)より引用.

最後に,佐渡島内の大部分の地域は,「佐渡弥彦米山国定公園」「国指定名勝・天然記念物」に指定されています.これらの地域で調査研究・試料採取をする場合は必ず事前に申請して許可を得る必要がありますのでご注意を.

2016年9月6日火曜日

発表ポスター作りのポイント

9月は研究集会や学会で研究成果を発表することが多い時期.そこで,自分の研究成果をポスター発表する際の,ポスター作りのポイントを大きく分けて3つにまとめました.

学会で観てもらえる・聞いてもらえるポスターを作るには?
https://staff.aist.go.jp/otsubo-m/contents_cv_PosterPresen.html

 1. ポスターを作る前の心構え
  (相手目線にたったポスター作りを意識しよう!)

 2. ポスターを作るときのコツ
  (どこに注目して欲しいかどこを議論したいかを意識して作ろう!)

 3. 発表本番では…
  (できるだけ多くの人に話しかけて積極的に見てもらおう!)



2016年9月2日金曜日

巨人の肩

9月に入り,研究集会や学会での発表の時期となりました.

研究者にとって,9月~10月はもっとも研究集会や学会が開催されることが多く,現在進めている研究の成果をいったん整理する時期にもなります.研究成果の発表が終われば,発表内容を論文としてまとめていきます.理想は研究発表するタイミングで,論文も一通り書き終えているのが理想です.

研究を進めていくのに欠かせない論文や文献の検索,それらを手軽に検索できる学術資料検索に便利なツールとして「Google scholar」があります.

「Google scholar」のトップページには「巨人の肩の上に立つ(Standing on the shoulders of giants)」とあります.12世紀のフランスの学者シャルトルのベルナールの言葉で,「現代の学問は多くの研究の蓄積の上に成り立つ」という意味だそうです(Wikipediaより引用).恥ずかしながら,Google scholarを使い始めて知った言葉でしたが,非常に深い言葉です.

どんなに成果を出しても,それは先人の研究があったからこそですが,1人の研究者としていつまでたっても先人におんぶにだっこでもいけないわけで,,,と先人に敬意を払いながら自分自身の今後の伸びを考えて悶々とする日々です.「研究をすること」は非常に奥深いと感じました.

Google scholar: https://scholar.google.co.jp/?hl=ja